前回の続きです。
2017年(後半) 奴が来る
2017年前半の勢いそのままに、中華メーカーを中心にベゼルレス端末がリリースされていきます。
遂にはベゼルレストレンドを生み出した張本人でもあるXiaomiが、「縦長画面、悪くないな」という事で自らセルフカバー(?)し、『Xiaomi MI MIX2』という縦長3辺ベゼルレス端末をリリースします。
中華の有名ブランドOPPOの子会社、OnePlusもトレンドを追いかけます。
OnePlus5という以前に発売していた端末をブラッシュアップし、縦長ベゼルレスかつカメラ性能を向上させた5Tを発売し、これは日本でもかなり(一部で)話題になりました。
Samsungも負けじと『Galaxy S8』をブラッシュアップし、更なる大画面と待望のデュアルカメラを手に入れた『Galaxy Note8』を10月に発売し、2017年の話題を掻っ攫っていく…かと思われたのですが。
『iPhoneX』が来ます。
ここまで読んで頂ければもうお気づきと思いますが、『iPhoneX』は縦長画面・ベゼルレス・デュアルカメラという2017年のトレンドを全て集約した上に、『Essential Phone』にあった「ノッチ」を採用することでギリギリまで画面比率を高めた端末でした。
それに加えニューラルネットワーク専用のエンジンを搭載したSoCを採用し、「AI」というワードを前面に押し出しました。
エンドユーザー的にも『X』はAppleがiPhoneの連綿と続いてきたデザイン哲学を大きく変えてきたのが目に見えて分かる端末でしたが、業界的にも化物端末だった訳です。
こうして激動の2017年は『X』が攫っていく形で過ぎました。
順位 | メーカー | シェア |
---|---|---|
1 | Samsung(韓) | 21.6 |
2 | Apple(米) | 14.7 |
3 | Huawei(中) | 10.4 |
4 | OPPO(中) | 7.6 |
5 | Xiaomi(中) | 6.3 |
その他 | 39.5 |
https://www.idc.com/getdoc.jsp?containerId=prUS43548018
そんな2017年の世界スマホシェアはこちら(ソースが変わっているので集計方法が変わっている可能性があります)。
Appleのシェアが僅かに下がり、2016年に世界7位だったXiaomiが5位に上がって来ています。
国内では年末にSONYがこのような端末を出していました。
トレンドに乗るのが必ずしも良いことではありませんし、XperiaにはXperiaなりのニーズや哲学があるのは分かりますが…まあガラパゴスだなあと言った所です。
ちなみに、かつてはかなり時代遅れの端末をリリースしていたAQUOSの同時期のモデルがこちら。
Sharpが鴻海に買収されたことでAQUOSにも台湾資本の介入が入り、まだ歪ながらノッチと3辺ベゼルレスの採用など、多少はトレンドに追いつこうという姿勢が見えます。
2018年 もっと画面がほしい!
さて、『iPhoneX』が業界とコンシューマーに衝撃を与えたという事は、つまり後追いが現れるという事です。
2018年、トレンドの口火を切ったのはASUSの『ZenFone5(2018)』です。
縦長液晶、(X型の)ノッチ、そして丁寧に背面デュアルカメラの配置まで『X』に寄せています。
ですが丸パクリという訳ではなく、ZenFoneのお家芸同心円状の背面デザインを採用し、ASUSなりのAI機能も実装しています。
LGが5月に発表した『LG G7 ThinQ』も同様のノッチを備えています。
もちろんデュアルカメラを搭載するのですが、『G7ThinQ』の一番の特色は側面のボタンです。
音量ボタンの下にGoogle Assistantを起動する専用ボタンがあり、ハードウェアレベルでAIとの提携を押し出しています。
一方、世界シェア1位のSamsungは独自の方向性で進化します。
『GalaxyS9/S9+』ではノッチを採用せず、『S8』と同様の前面デザインになっています。
『S9+』はデュアルカメラを搭載し、Samsung独自のAIアシスタント『Bixby』を始めとした様々なAI機能など、しっかりトレンドは狙い撃っている手堅い端末です。
ちなみに無印『S9』のカメラはシングルですが、絞りが物理的に動く可変絞りを採用することで明所暗所問わず安定した撮影が出来るワクワク仕様になっています。
『MI MIX』、『MI MIX 2』を世に出したXiaomiはノッチこそ無いものの背面デザインが相当『X』に寄った『MI MIX 2s』を発売。
なお、その後しっかりノッチを搭載した『MI8』を発売しました。
『MI8』は『X』同様指紋認証無し、生体認証はFaceID(もどき)のみという事で、見た目については本当に『X』ライクです。
上位モデルの『MI8 Explore Edition』は画面内指紋認証を搭載した意欲作です。
その後も『iPhoneX』ライクな端末は色々発売されましたが…(どうでもいいですが中央のOnePlus6は今の私の端末です)
決定版はこれです。
日本でもCM打ちまくり、『Huawei P20 Pro』です。
極小ノッチ、縦長画面、『X』ライクな背面カメラと2018年のトレンドを取り揃えていますが、その背面カメラはなんとトリプルカメラ。
2016年の『Huawei P9』から始まったライカとの協業がここで一つの完成形を見たと言えそうです。
カメラもAI機能を存分に活かし、SNS受けする味付けと話題です(味付けされすぎとの意見もありますが、現代のスマホの使い方にはしっかり合致していると言えます)。
また、ベゼルレスを追求する一方でどうしても縁が残る下アゴの部分を有効活用し、前面に指紋認証センサー兼ホームボタンを設置したのは英断でしょう。
Huaweiは国内ではsimフリー端末しか販売していなかったのですが、『P20pro』ではわざわざ国内向けにおサイフケータイを搭載し、docomo専売で売り出すという力の入れようです。
どうでもいいんですが高嶺の花子さんというドラマを流し見していたら登場人物の使っているスマホが全部これで笑っちゃいました。遊戯王とかヴァンガードの世界かな?
そんなこんなで、2018年のトレンドの決定版は『P20 pro』で決まりかな…と思っていたら、まだありました。
『vivo NEX』というこのスマートフォン、特色はもちろんにょきっと飛び出したインカメラです。
『X』のような「ノッチ」デザインはベゼルを少なくするための工夫でしたが、ダサいという意見もそれなりにありました。
それに対するvivo(これまた中国のスマホメーカー)の回答がこれです。
画面内にインカメラを一切載せず、必要なときだけ電動式インカメラがせり出して来ます。
更に指紋認証は画面内埋め込み、フロントスピーカーは搭載せず、画面が振動することで音を出す「Screen Soundcasting Technology」を採用するなど、異常なまでのベゼルレスへのこだわりが感じられます。
ちなみにこの端末が発表されたのはサッカーワールドカップの時期なのですが、vivoがめちゃくちゃにスポンサードしていたのでフィールドがvivoの広告だらけで試合が全然頭に入ってきませんでした。
このようにノッチに頼らず画面占有率を上げるアプローチを取ったのはvivoだけではありません。
中国OPPO社の『OPPO FIND X』が殴り込みをかけてきました。
早速仕組みを見てみましょう。
そう、『FIND X』は端末上部がそのままスライドしてカメラが出てきます。
指紋認証は搭載せず、『iPhoneX』や『MI 8』同様顔認証のみになるのですが、ということはつまりロックを解除する度にこのギミックが発動するわけです。
しかも背面カメラも同様のギミックでせり出してくるので、通常時は画面も背面もまっさらな状態になります。
持ってないので分かりませんが、この背面は得も言われぬ美しさらしいです(OPPOのロゴの主張が激しすぎる気もしますが、まあ持ってないので…)。
「カメラがモーターでせり出してくる」なんてむちゃくちゃギークでニッチな端末のような気がしますが、意外とこの仕組みは業界に波及します。
Huaweiのサブブランド『honor』は『FIND X』同様のスライド式端末『honor MAGIC2』の登場を予告しました。
そして『honor MAGIC2』が発表された同日、何度も出てきた中華メーカーxiaomiのCEOが、Huaweiに先を越されて悔しかったのかSNS上でこの画像を公開します。
ベゼルレスのはしり『MI MIX』シリーズの次世代機、『MI MIX3』だと目されるこの端末も『FIND X』同様の機構を備えているのが分かります。
順位 | メーカー | シェア |
---|---|---|
1 | Samsung(韓) | 20.9 |
2 | Huawei(中) | 15.8 |
3 | Apple(米) | 12.1 |
4 | Xiaomi(中) | 9.3 |
5 | OPPO(中) | 8.6 |
その他 | 33.2 |
https://japan.cnet.com/article/35123382/
そんな2018年第2四半期の世界スマートフォンシェアがこちら。
もちろん第2四半期限定のデータのためiPhoneの新機種の発売などはないのですが、それにしても遂にHuaweiがAppleを抜いて世界2位に躍り出ているのが目に付きます。
シェアやここまでのおさらいを見ても分かるように、スマートフォンのトレンドは最早中国メーカーが作り、中国メーカーが回していると言っても過言ではない状態です。
OPPOやHuaweiといったメーカーは一部日本にも進出していますが、未だにキャリアがスマートフォン販売の大部分を掌握している日本ではこれらのトレンドはほとんど入ってきていません。
個人輸入しようと思えばまあいくらでも出来るのですが、法律的にもグレーオブグレーだったりサポートは当然受けられなかったりと、中々不自由な状況になっています。
以上ここ2年のトレンドをざっくりまとめてみました。
今回登場した端末はどれもメーカーの技術の粋を集めたもので、1端末1ブログ書けるようなものばかりなので全然内容が書き足りないのですが、はてブの無料プランがパンクしてしまうのでこれくらいにしとこうと思います。
他にもAI、有機EL、ゲーミングスマホといった色々なトレンドがあったり、紹介してない端末が無限に存在したりします。
おいおいちょっとずつ書けたらいいなと思うのですが、面倒くさかったらやりません。