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【第2夜】ねえ!!世界のスマホ市場で何が起きてたの!?

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日本が東洋のガラパゴスと呼ばれて幾星霜。

日本独自の機能がばちこり搭載されたガラパゴスケータイ=ガラケーなんて概念も登場して久しいですが、ぶっちゃけ日本のガラパゴスっぷりはスマホ全盛の2018年も続いています。

「なんか最近スマホでかいなー」とか、「なんか縦長だなー」とか思いませんか。

実は日本人がキャリアからスマホを割賦割引で購入している2年間で、世界のスマホ市場ははちゃめちゃに変化していました。

別に知らなくても問題ないスマホ小話、第2夜は「激動の2016年~2018年 世界スマホ事情」を追ってみたいと思います。

 

 

2016年 スマホ過渡期とデュアルカメラ

 

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iPhone7/7Plus



 

iPhoneで言うとiPhone7が発売した年。

スマートフォンと言えばこの形状、というスタンダードなものが多いです。

まあ2年前なので当時革新的であってもスタンダードになっているのは当然なんですが。

 

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そんな中でもトレンドの波は見て取れます。

中華スマホの雄、Huaweiがドイツの老舗カメラメーカーライカとコラボしたデュアルカメラを搭載する『Huawei P9』をリリース。

iPhoneの後追いメーカーという印象が拭えなかったHuaweiが一気に独自色を打ち出します。

iPhoneも7Plusからデュアルカメラを採用していますが、7Plusが広角レンズと望遠レンズの二刀流で光学ズームを可能にするというアプローチを取ったのに対し、HuaweiはRGBセンサーとモノクロセンサーを二刀流することで画質の向上を図りました。

イカブランドの名前を借りたこともあってこの戦略は成功、以降デュアルカメラはHuaweiお家芸となります。

Huawei P9』は国内でも発売されたものの、SIMフリー市場がまだまだ小さかったため認知度は低めです。

 

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GalaxyS7edge/Xperia X Performance

国内キャリアではこのような端末が見られました。

今でも大切に使っている人をそこそこ見かける端末ではありますが、既にデュアルカメラというトレンドには乗り遅れている感もあります。

 

順位 メーカー シェア
1 Samsung(韓) 22.8
2 Apple(米) 15.3
3 Huawei(中) 9.6
4 OPPO(中) 7.2
5 vivo(中) 6
6 LG(韓) 5.5
7 Xiaomi(中) 3.7
8 Lenovo(中) 3.7
9 TCL(中) 3.7
10 ZTE(中) 3.5
その他 18.9

https://tech.nikkeibp.co.jp/dm/atcl/column/15/011300091/020100026/

 

2016年の世界スマホシェアはこのような形です。

HTC、SONYといった日本人に割と親しみのあるメーカーは「その他」入りを果たしています。

特にSONYは世界市場での没落ぶりが著しく、2016年の出荷台数がおよそ1510万台で、世界のスマホ出荷台数が13億6000万台なので、世界シェアは僅か1%ほど。

それでもXperiaの国内シェアはこの年15%あったので、既に日本のガラパゴスっぷりが浮き彫りになっています。

 

ちなみにこの年に私はiPhone5sからXperiaXPに機種変更しました。

理由は見た目が好きだったから。

 

 

2017年(前半) 世界は画面に包まれた

 

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戦火にも包まれます。

2017年6月に発売された『GalaxyS8/S8+』は、縦長画面、ギリギリまで攻めた上下左右のベゼル幅により、当時圧倒的な画面比率を誇りました。

 

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デュアルカメラのトレンドにこそ追従していないものの、Samsungの特徴だった前面指紋センサーを背面に追いやってまで得た画面の迫力は、(少なくとも業界関係者の)度肝を抜きます。

 

ただし、この『大画面』というキラーワードは、伏線無く唐突に現れたものではありません。

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実は2016年の時点で、Xiaomiという中国のメーカーから『Xiaomi MI MIX』という端末が発表されていました。

「Xiaomiという」とか言っていますが、このあとめちゃくちゃ出てきます。

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GalaxyS5/MI MIX/iPhone7Plus http://smaho-dictionary.net/special/xiaomi-mi-mix/

画面比率こそ16:9とスタンダードですが、インカメラや各種センサーを下側に集中させることで3辺ベゼルレスを実現したこのスタイルは、(流行りこそしなかったものの)時代を変えるきっかけになります。

ちなみに、見た目のインパクトだけでなく中身も当時最新のSoCと物理メモリ6GB(!)という、2018年現在でも一線級で使えるかもしれないギークな代物です。

 

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『MI MIX』の登場を受けて…かは分かりませんが、続いて米Essentialから『Essential Phone PH-1』が登場します。

『MI MIX』を彷彿とさせる3辺ベゼルレスに加えて上部には「ノッチ」を設け、縦長画面を採用することで画面比率を高めています。

ミニマルな見た目と、ピュアに近いAndroidOS、そして価格の安さから人気を博し、なんと2018年になり国内MVNOから発売されることが決まるほどです。

 

このように既に蒔かれていたトレンドの萌芽を踏まえ、満を持して登場した『GalaxyS8』の完成度が高いのは、ある意味当然と言えます。

 

この先激動のスマートフォン市場はどのように変化を遂げるのか。

なんか長くなったので2017年後編に続きます。

【第1夜】新しいiPhoneの何がすごいのか

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去る9月21日、新型iPhoneこと『iPhoneXS』、『iPhoneXS Max』が発売されました。

去年発売された『iPhoneX』の正当進化版と言える2機種ですが、ぶっちゃけ新機種になって何が変わったのか分からない人も多いようです。

 

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というか、サイズの大きい『Max』はまだしも、『XS』の見た目については『X』からほぼ変わっていない以上、この1年でiPhoneが進化したのは価格だけだと認識されても仕方がないのかもしれません…が、XSシリーズは実はしっかり進化しています。

しかもその進化は、実のところ現在のスマートフォン業界のゲームチェンジャーと言えるほど圧倒的なものなのですが、それがみすみす見逃されてはジョブズも浮かばれないでしょう。

という訳でジョブズとは特に親交の無いAndroid党の僕が渋々iPhoneを絶賛するのがこの記事です。

 

スマホオタクの皆さんには常識の話をなるべく分かりやすく書くだけなので、オタクの皆さんは別に読まないで、かつ突っ込まないで下さい。

スマホオタクじゃない皆さん的には知っても別に得しない話なので、ブログを読まずお手持ちの端末でFGOでも周回して下さい。

 

それでは、別に知らなくても問題ないスマホ小話第1夜、始めます。

 

 

何が変わったか?

 

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『X』が『XS』になって進化したもの。

それはアンテナライン

端末下部にアンテナラインが追加され、それに伴いスピーカー穴の配置も変わりました!すごいね!

そして背面カメラの位置

背面カメラのレンズが数ミリズレたことで、『X』のケースと『XS』には完全な互換性はありません!すごいね!

更にApplePayが充電切れの状態でも使えるように

これで電池切れでも家に帰れます!すごいね!

更に更に、防水性能がIP67からIP68になり、水深2mでも死なないようになりました!

これはすごい。

 

これらも変化ではありますが、今回したいのはSoCの話です。

SoCとはスマートフォンの頭脳の事で、PCで言うマザーボード、CPU、GPUWi-Fiユニットなんかをコンパクトにまとめたものを言います。

スマートフォンの性能面に直結する重要なユニットであり、iPhoneの場合はAppleが自前で『Apple Aシリーズ』というSoCを設計しています。

『X』に搭載されていたのが『A11 Bionic』、そして今回『XS』に採用されたのが『A12 Bionic』です。

愛称も一緒だし、数字全然変わってないし何がすごいの?という感じだと思いますが、実はこれ世界初、そしてしばらくは最先端であり続けると思われるスーパースゴイSoCなのです。

 

『A12』のすごすごポイントはそのトランジスタです。

トランジスタとは、かつての真空管の後に登場したチップを構成する素子の事なのですが、まあとにかくこれが多ければ多いほどチップは一般的に高性能・省電力・低コストになるとされています。

じゃあ『A12』を構成するトランジスタは何個なの?と言うと、69億個です。

69億個って何個?となると思いますが、69億個です。

 

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この小さいチップに69億個もトランジスタが入っているという事は、ひょっとしてトランジスタってめちゃくちゃ小さいのでは…?と思ったアナタ。

ご明察です。スマホオタクになりませんか?

 

トランジスタ半導体回路なのでめちゃくちゃ多くの配線によって構築されているのですが、その配線の幅を『プロセスルール』と言います。

『A12』のプロセスルールは7nmです。

1nm0.000001mmらしいので、たぶん僕の器よりも小さそうですね。

プロセスルールが微細化される程同じ面積に配線出来る=トランジスタ数が増えるので、上記の高性能・省電力・低コストを受けることが出来ます。

一概にプロセスルールの細かさ(トランジスタ数)と性能が比例する訳ではないのですが、ひとまず他のSoCと『A12』を比較してみましょう。

 

  

  主な搭載機種 型番-ルール
2010 iPhone4 A4-45nm
2011 iPhone4S A5-45~32nm
2012 iPhone5 A6-32nm
2013 iPhone5s A7-28nm
2014 iPhone6 A8-20nm
2015 iPhone6s A9-14nm
2016 iPhone7 A10-16nm
2017 iPhone8/X A11-10nm
2018 iPhoneXS A12-7nm

 

  主な搭載機種 型番-ルール
2013 XperiaZ1 SDM800-28nm
2014 XperiaZ5 SDM810-20nm
2015 XperiaXZ SDM820-14nm
2016 ZenFoneAR SDM821-14nm
2017 XperiaXZ1 SDM835-10nm
2018 XperiaXZ2 SDM845-10nm
2019(仮) SDM855(仮)-7nm

 

 

SnapDragon(SDM)は 米Qualcommが設計しているSoCで、2017年時点でAndroidスマートフォンの6割以上に搭載されています。

『8xx』シリーズはその中でもiPhoneと同様のハイエンド向け製品ですが、現在のところほとんど1年分プロセスルールの微細化において差がある事が分かります。

SnapDragon855(仮)については例年通りであれば今年の後半に発表、来年から実際にスマートフォンに搭載されるものと思われ、製造を担当しているSamsungが7nmプロセスの製造に成功していることから、まず間違いなく7nmプロセスルールで登場するはずです。

他にも最近日本でも存在感を増している中国のメーカーHuaweiも7nmプロセスルールのSoC(Kirin980)を既に発表していますが、実際に搭載されるスマートフォンの発表は10月16日という事で、製品化ではAppleが先んじたことになります(余談ですが、発表そのものはHuaweiの方が早かったため、AppleHuaweiも自分が「世界初の7nmプロセッサだ」と主張しています。どうでもいいですね)。

 

Kirin980についてはまだ未知数ですが、SnapDragonは既にかなりAppleの後塵を拝している状況です。

『iPhoneX』の半年後に発表されたSnapDragonの(現)最新SoC『SDM845』は『X』の『A11』とほとんど同じスコアを出しています。

しかし『XS』の『A12』にはかなり差をつけられてしまい、SnapDragonは現状Androidに搭載されるSoCの中で最も性能が高いものなので、Android陣営のSoC性能はどんなハイエンド機種であっても『iPhoneXS』の半年遅れと言わざるを得ません。

 

また、7nmプロセスの開発・量産には莫大な金がかかるため、AMDなどに半導体を納入していたGLOBAL FOUNDRIESという半導体会社は、開発には成功したもののつい最近量産を諦めました。

この脱落により、現状で7nmプロセッサを作れる技術があるのは韓国のSamsung(SDMの製造)、Intel、そして台湾のTSMC(Aシリーズの製造)の3社のみとなっています。

 

すごくない?『XS』。

 

 

そして何が変わるか

 

プロセスルールが微細化してトランジスタ数が増えると、SoC内で割ける処理性能に余裕が生まれます。

このSoC内の処理性能の割り振りにはSoC毎に特徴があり、例えば先程の『SnapDragon』はどちらかというとGPU(映像とかを主に処理するエンジン)を重視しており、そのお陰で総合性能がほとんど同列の『A11』よりゲーム性能が高いと言われます。

では、『A11』の43億個から69億個までトランジスタ数が増えた『A12』はどこにその性能を使っているのでしょう。

 

答えは『NPU』です。

『NPU』は最近流行りのAIをフル活用するための専用プロセッサで、従来はCPUやGPUが担っていたニューラルネットワークの実行に特化しています。

『A11』には『NPU』が1基搭載されていましたが、『A12』ではこれが8基に増え、1秒辺りに処理できる回数を表すOPSは『A11』が6000億OPSなのに対し、『A12』では5兆OPSまで爆増しました。

この恩恵を一番受けているのがカメラ機能で、『XS』では今まで以上に美しいポートレートが撮れると宣伝されています。

エンドユーザーとしては「それだけ?」と思わなくもないですが、今後ニューラルネットワークの出番は増えていくはずですので、伸び代が十分確保されていると考えたいですね。

堅実にCPU、GPU性能に処理能力を割り振るのではなく、これからを見据えてNPUに舵を切った『A12』は、実はかなり革新的なSoCと言えるでしょう。

 

ちなみに、もう誰も覚えていないと思いますが『A11』と『A12』の愛称がどちらも『Bionic』だったのは、『Bionic』がNPU搭載SoCを意味する(とAppleが決めた)ためです。

なので、順当に行けば『A13』も『Bionic』になることでしょう…。

 

 

まとめます

 

『XS』シリーズは最先端のSoCを搭載し、それによりAI機能が超強化された超すごいスマートフォンだと言うのが少しは伝わったでしょうか。

これだけ超すごいスマホなら10万円以上するのも当然……かどうかは個人の価値観によるので、自分の好きな端末を自分の好きなペースで使うのが一番です。

つまりこんなブログを読んでも意味がないのですが、もしあなたが『XS』を買おうと思っているなら、「それって前のと一緒じゃん」と言ってくる奴にこれらの知識をめちゃくちゃにひけらかして避けられたりして下さい。