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【実機レビュー】SONY渾身のINZONE H9を3ヶ月使ったけど……まあ、買わなくてもいい

木枯らしが吹きすさびTwitterではAIの描いた絵が跋扈する昨今、いかがお過ごしでしょうか。

さて、去る6月に発表されたSONYの新ゲーミングブランド、INZONEを覚えている方はいらっしゃるでしょうか。

実は私、その第一弾ラインナップ中、ハイエンドのワイヤレスヘッドセットとして発売された『INZONE H9』を発売日に購入していました。

レビューする気は無かったのですが、まあ色々思うところもあり、約3ヶ月ほど使ってみての感想を残しておきます。

そもそもINZONEって何?

なんなんでしょうね、ほんと…。

INZONEはSONYが新たに発表したゲーミングブランドです。第一弾ラインナップとして、お高いゲーミングディスプレイとヘッドセットが発売されています。

いまいちコンセプトの伝わらない公式サイト

SONYには言わずと知れたPlayStationブランドがあり、そこでも公式ヘッドセットを販売したりしているので、INZONEの立ち位置は正直良く分かりません。

今のところのラインナップを見る限り、他のSONY産マスターモニターやヘッドホンのノウハウを流用し、PSブランドよりはハイグレードなゲーミングブランドになろうとしている気がします(出来ているとは言っていない)。

 

そんなよく分からないINZONEのハイエンドヘッドセット、『INZONE H9』はヘッドセットラインナップの最上位商品にして、お値段は36300円~とゲーミングヘッドセットの中でもかなり高額な部類です。

現在のヘッドセットラインナップ

他には『INZONE H6』、『INZONE H3』という廉価グレードが存在し、『H6』は『H9』からノイズキャンセリング機能を除いた商品、『H3』は有線仕様の最廉価商品となっています。

いずれも、競合品と比べると正直かなり高価ですが、機能面で有意な差があるのか、SONYブランド代なのか…見ていきましょう。

ファーストインプレッション

非常に大きい紙製の箱を開けると、H9がどーんと鎮座しています。

本当に箱がデカい

近年のSGDs指向を受け、パッケージは中身も含めすべて紙製です。高級感はありませんが、この辺りは仕方ないですね。

充電は当然TypeCで、ケーブルも付属しています。

ヘッドセット本体もかなり巨大です。

全体の重量としては330gなので、まあハイエンドゲーミングヘッドセットとしては常識的な重量なのですが、ハウジング部分がかなり巨大でバランスが悪く感じます。

色は白のみ、PS5のデザインと揃えたものと思われますが、個人的にはあまり好みではありません。

青、白、オレンジの3色で光ります

”ゲーミング”、と銘打ってはいるものの、光る部分はハウジングの付け根部分のみです。元々ヘッドセットのライトなんて装着中は見えませんし、これはかなり上品でいいですね。

ハウジングの可動域は広い一方、約90度くるくると抵抗なく回転するので、着脱の際は少し手間取るかも。

USBレシーバーは高品質な作りです。

横のスイッチでPCとPS5の最適化を切り替えることが出来ます(PS5は自動判別してくれてもいいのでは…?)。

このレシーバーでPC/PS5/その他機器と2.4GHzの無線接続が可能な他、Bluetoothの同時接続も可能です(後述)。

3ヶ月使ってみて良かったところ

 

ノイズキャンセリング

INZONE H9における最大の売りですが、これは基本的に良かったです。

ハウジングそのものの密閉度が高いため、ただでさえ高い遮音性がソフトウェアによるノイズキャンセリングで更に強化され、エアコンの音も工事の音もシャットアウトしてくれます。

SONYのハイエンドヘッドホンであるWH-1000XMシリーズ同様外音取り込みモードなども装備されており、私のライフスタイルでは特に使う機会はないものの、便利な人には便利だと思います。

一方で、この高性能なノイズキャンセリング性能が悪い方向に働く部分もあり、手放しでは喜べない状態でもあります(後述)。

専用ソフトウェア

INZONE H9にはPC向けにカスタマイズのための専用ソフトウェアが用意されています。

機能は必要十分で、中々使いやすいソフトウェアでしたが、立体音響の最適化はそこまで効果が感じられませんでした。

Bluetooth同時接続

これは無線レシーバーで接続した機器とBluetooth機器を同時に聴くことの出来る機能です。レシーバーをPS5に挿し、スマホBluetoothと同時接続することで、作業用BGMを流す用途などに使えます。

また、折しもSwitchでスプラトゥーン3が発売されたので、レシーバーでSwitchの音を聞きつつスマホのDiscordで通話をする、と言った用途で活躍しました。Bluetoothの音質は推して知るべし、と言った状態なので、恐らくこちらが推奨される用途ですね。

音質は恐らく良い

私が耳ソムリエではないので説得力がなく本当に申し訳ないんですが、音は多分いいです。そもそもの密閉性が高いこと、ノイズキャンセリングが強力なことから音楽体験はヘッドセットとは思えないほど上質です。

特に、PS5で『Horizon Forbidden West』を遊んだ際には、Tempest Audio(PS5の独自立体音響)が遺憾なく発揮されているのか、かなり立体感を感じるプレイ体験が出来ました。

3ヶ月使ってみて微妙だったところ

サイズ

まずはデカくて重い、これに尽きます。

前述の通りハウジング部の重量バランスが悪く、根本がグラグラなのでヘッドセット装着状態で下を向くと簡単にずり落ちてしまいます。

私の場合、フィッティングをタイトにしても変わらなかったので、まずは量販店などで試着してみることをおすすめします。

安っぽい、すべてが

H9はハイエンドゲーミングヘッドセットの中でも高額な部類ですが、実際使ってみると全くそうは思えません。

安っぽさの原因はいくつも思い当たりますが、主なものは以下の通り。

・可動部が安っぽい

ブームマイク、音量調整ダイアルなどよく触れる部分のフィードバックがものすごーーくしょぼいです。プラスティッキーなカチカチとした感触があり、とても高級品とは思えません。

・演出が安っぽい

電源ON時、OFF時等に鳴る通知音が分かりやすいですが、「ヴーー」というビープ音が爆音で鳴ります。最初は何かエラーでも出ているのかと思うくらい無機質なフィードバックでがっかりします。ここは、PlayStationとの連携を売りにしているのだから、PS5の起動音のような軽やかな音を鳴らしてくれてもいいのに…と思ってしまいました。

このビープ音が事あるごとに鳴り響くので、いつの間にかヘッドセットを外してから電源をオフにする習慣がついてしまいました…。

また、ブームマイクは上に跳ね上げることでミュート、下に下げてONと分かりやすく便利な仕様なのですが、驚くべきことにこのミュート動作では通知音が一切鳴りません。一応、ブームマイクがONになる部分まで下げると”カチッ”という物理的な手応えはありますが、かなり気を使わないと気が付きません。

なまじノイズキャンセリング能力が高いため、マイクがONなのかOFFなのか全く分からず、不安になります。

・マイクの品質が低い

まあ、ゲーミングヘッドセットのマイクはどれもそんなに音質が良いわけではないんですが…本機のマイクは確実に36300円の水準には達していません。

PS5でもDiscordでもくぐもった音が相手に届いていたようで、およそ半額のLogicool G733の方がまだマシ、という状況でした。

Discord公認デバイスなのにね…

PS5との連携はそこまででもない

PS5との連携を売りにしている本機ですが、分かりやすい連携はPS5のUIから電池残量を確認できる程度です。

ノイズキャンセリングの耳への負担が大きい

本機でノイズキャンセリングをONにすると、ハウジング内が航空機の機内で気圧が上がったような状態になります。

元々ハウジングの物理的な密閉性が高いので、この違和感がかなり大きくノイキャンを長時間常用するのは不快に感じる部分がありました。

電池持ちが、悪い!!

これはかなり大きかったです。

公称の電池持ちはノイキャンOFFで32時間となっていますが、そもそもノイキャンOFFで常用するならばH9ではなくH6を買うわけで……。

ノイキャンONの電池持ちは、LED完全オフで凡そ半日くらいの感覚でした。また、自動電源OFFの機能があるのですが、どうもこれが「何にも接続されていないときに」自動で電源を切る機能なようで、例えばPC等にレシーバーを挿したまま放置してしまうと働きません。

Logicool製品などは「音声入力が無い時間」ベースで電源をOFFにしますし、こちらが一般的な仕組みだと思うんですが…。なので、本機の使用後席を外す際は毎回手動で電源を切る必要があります。

また、電池残量が減ってくると上述のビープ音が短い間隔で鳴りまくり、著しいストレスを与えてきます。

 

まとめ

まあ、既に承知しているとは思いますが、私としてはこのヘッドセットはおすすめ出来ません。

音質とノイキャンはヘッドセットにしては素晴らしいですが、そもそも本機はSONYのハイエンドヘッドホンであるWH-1000XM4よりも高いわけで…音質を重視するならば順当に高級感を感じさせてくれるあちらを買うべきだと思います。

微妙だった点の一つ一つは本当に些細なものなのですが、それらが積もり積もってINZONEという新シリーズの第一弾製品にも関わらずチープな出来になってしまっているのは残念でした。

今後製品が出るのであれば徐々に値段相応の商品になる可能性もありますが、現状このヘッドセットをおすすめ出来るのは「ゲームはPS5でしかプレイしない」「音質が最重要!」「ボイスチャットしたいけど隣の部屋で土木工事をしている」、そういう人だけだと思います。

ヘッドホンならば専用品を、ヘッドセットならばLogicoolやRazerのハイエンド品をおすすめします。

私はastro A30を注文しました。

 

おわり。